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91.花見ツアー |
2005年2月24日高知新聞掲載 |
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日帰り旅行の定番の一つが桜の季節の花見ツアーです。
今年も高知の開花日は全国でトップを争うようで、3月後半と予想されています。桜は日本を代表する花で国花。持って生まれたDNAのせいか、春になると一度くらいどこかで桜見物をしたくなるのが不思議です。
暖かくなるにつれ、花見ツアーの問い合わせも増えてきます。花や紅葉は年によって色のつき方や花の咲き方が違うのも人気の秘密で、毎年出かけるリピーターも数多く見られます。
ところが、自然相手の旅行には通常のツアーと違う難しさがあります。夕日の観賞、動物や鳥の観察、蛍見物などを目的とした旅行も同様で、天候や生き物の気分まかせの部分があり、どうにもならないことが時々起こります。
桜には開花時季の問題があります。旅行企画は数カ月前にできあがりますので、出発の日が近くなって今年の桜は開花が非常に早いとか遅いという情報が入っても後の祭りです。バスの手配や参加いただく方のスケジュールがあり、急な日程変更はできないのが普通です。
しかも桜はパッと咲いてパッと散ると言われるように、花を楽しめるのはほんの1週間足らず。異常気象の多いここ数年は、せっかく集客できたツアーが開花の時季とずれたために取り消しになったケースもあります。
微妙な問題はほかにもあります。
現地に問い合わせをすると、身びいきと商売っ気で良い方に答えてくれることが多いのです。花が時季を過ぎ、おしまいに近くなっているにもかかわらず、「まだまだ数日は大丈夫」という答えが返ってきたりすると、いろいろ苦労させられます。 |
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92.花はどこ? |
2005年3月3日高知新聞掲載 |
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自然を相手にしたツアーが難しいのは、天候や花の開花時季などに左右されるからです。おまけに事前に現地に問い合わせても、かえって色よい答えが返ってきたりすることがあって厄介です。
スキーツアーでも、まだ人工降雪機のなかったころ、出発前の確認で50センチの積雪という返事をもらって安心していると、日陰の雪だまりのような場所の深さだったということがありました。
そんな状況が複合的に起きた悲惨な例もあります。
奈良県長谷寺の牡丹(ぼたん)を観賞するツアーでした。盛りは過ぎたけれど最後の方の花が残っているということで出発したところ、現地に着くと、前夜の雨で花がほとんど無くなってしまっていたのです。
「花はどこ?」「花はどこ?」。ツアー客に問いつめられた添乗員は、苦し紛れにブラックジョークのつもりで「ここにあります!」と、自分の鼻を指さしたそうです(私ではありません)。もちろん、そんな冗談が通じるはずもありませんでした。
そういうわけで、このごろ開花時季とツアーの日がずれるのを防ぐ気の利いた企画が登場してきました。
以前からミステリーツアーという旅行があります。到着するまで行き先を明らかにしない「?」の要素が売り物の旅行です。
これをアレンジして「桜の−」や「紅葉の−」というタイトルの付いたミステリーツアーが売り出されています。行き先を特定していないので、桜や紅葉が最盛期になる場所を幾つかの候補地の中から直前に選択し、出発すればよいわけです。
花の見ごろとツアーの日程がうまく合わず、さんざん苦労した揚げ句、発想の転換から生まれたヒット作です。 |
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93.究極の旅 |
2005年3月10日高知新聞掲載 |
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高知空港から海外へのチャーター便が相変わらずの人気ですが、旅行の際にチャーターするのは飛行機だけではありません。船やバスのチャーターもあります。
チャーター船は2万8,000トンの豪華客船「飛鳥」や「パシフィックビーナス」のクルーズツアーが高知新港から年1回程度出航しています。これは世界一周や南太平洋クルーズなどの長い航海の合間、船のスケジュールが空いているのを利用して2泊3日のクルーズを楽しんでいただく企画です。
行き先は屋久島や奄美大島、韓国の釜山が恒例です。行ってみたいところはほかにも多いのですが、2泊の日程で往復できて大型船が着岸でき、観光もできるという条件を満たす場所は意外に少ないものです。
豪華船の旅は“究極の旅”と言われ、2泊のクルーズでもその魅力はよく分かります。海の景色はもちろん、洗練された食事、カルチャー教室や映画などの船内イベントなど独特のプログラムが組まれ、楽しみが盛りだくさんです。“船が全部やってくれる”ので添乗員は申し訳ないぐらいゆっくりできます。
本格的な長いクルーズでは中高年のご夫婦の参加が多くなります。その場合、引っかかっていたことが一つありました。欧米人カップルはともかく、日本人のご夫婦が1カ月以上同じ船内で過ごして雰囲気が悪くなったりしないかということです。
しかし、最近乗船した方から話を聞いて、要らぬ心配だったことが分かりました。その方いわく、「2人とも毎日船内で行われるイベントやカルチャー教室に出るのに忙しく、日中はほとんど顔を合わす機会がなかった」。
船内には医療関係者も乗船していますので、その意味でも自宅にいるより安心かもしれません。
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94.高野山にて |
2005年3月17日高知新聞掲載 |
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週末の添乗員不足で急きょ「高野山日帰り参拝の旅」に行って来ました。
高知を午前5時10分に出発し、帰りは午後11時50分というバスツアーです。高知からバスで徳島港、そこからフェリーで和歌山港に渡り、高野山へという日程。片道7時間、高野山で約4時間ですが、意外に快適でした。高速道路のおかげと、途中2時間のフェリー乗船時間があって気持ちが切り替わるのも疲れが軽くなる要素です。
寒波の襲来で四国内の高速道路や標高900メートルの高野山は予想外の雪景色でした。特に高野山“奥の院”のうっそうとした杉木立に、高知ではあまり見られない滞空時間の長い雪が絶え間なく降る様子は厳粛で、聖地そのものの印象でした。
高野山は弘法大師によって開かれた真言宗の総本山で、世界文化遺産としても知られています。訪れたことのない人はその名称から、山の上に大きなお寺があるというイメージを持つようですが、実際は大きな“宗教町”のような別世界の雰囲気です。
高野山では専門の案内人がガイドをします。以前もよくツアーで参拝したのですが、添乗員は別行動の場合が多く、ほとんど案内人の話を聞いたことがありません。
今回雪の中で聞いていると、お遍路さんの装束の話になりました。あの白衣は行き倒れた時にそのまま葬ってもらえる意味とのこと。過去に仕事で四国八十八カ所を五巡ぐらいしているのですが、そのころは不勉強で白衣は身を清めるためか、歩きやすいユニホームのように思っていました。昔のお遍路さんは決死の覚悟で巡拝の旅に出たことをあらためて実感します。
その厳しさを想像している間、しばらく寒さを忘れていました。 |
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95.“添え物”さん |
2005年3月24日高知新聞掲載 |
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この「つれづれノート」もあと2回になりました。そこで初心に戻って今回は添乗員についてです。
添乗員という言葉は辞書に“団体旅行で世話、案内のために付き添う人”と載っていますが、字面を見るといかにも添え物のような、いてもいなくても良いような印象です。もっと適当な言葉はないだろうか?という声が業界には以前からあります。時には間違えて「搭乗員さん」と呼ばれたりしますが、搭乗員は飛行機関係の人です。
「添乗員」はもともと、旧国鉄で使われた用語と聞いています。大人数のグループが列車で旅行するとき、安全管理のために同行・添乗したのが起源でしょう。
最近の添乗員は結構多忙です。交通機関、宿泊、食事、入場場所などの事前確認や案内、海外では通訳、時にはガイドも務めます。
添乗員のキャラクターで旅行の印象がかなり違うといわれますが、何事もなく日程を終えたときの添乗員は少し影が薄い感じです。何かトラブルが起こって解決したりすると、添乗員の株は一気に上がります。不謹慎ですが、気持ちが充実しているときなど、何事もないより少々のトラブルが発生してほしいと思ってしまう−というのが仲間内の話です。
海外での添乗員の呼び方は、ヨーロッパ方面では主に「ツアーリーダー」、アメリカ方面では「ツアーコンダクター」です。
空港やホテルのフロントなどで「ツアーリーダー」と呼ばれたりすると一瞬誰のことかと思いますが、悪い気はしません。威厳があって添え物とは大きな違いです。
でも、これを日本語に訳したとすると、あまりにも大袈裟(おおげさ)。どちらかといえば黒子に徹すべき役柄なので、やはり添乗員で良いのかと思います。 |
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96(終).おしまいに |
2005年3月31日高知新聞掲載 |
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「つれづれノート」もとうとう最終回になりました。
連載前、このタイトルを聞いたときは、毎日忙しくて“つれづれな(退屈な)”時間があるわけでもないのにと思ったりしたのですが、振り返ってみると結局タイトル通りでした。
連載中は、旅行に参加した方や出会った方から「楽しみに読んでいます」と声をかけていただき励まされました。中には「事情で行けなくなりましたが、旅に出た気分で楽しんでいます」と言ってくださる方もあり、プレッシャーがかかりました。
苦笑させられたのは、「イラストがよく似ていますねえ。雰囲気までそっくり!」とよく言われたこと。毎週文章の内容に応じて描いてもらったのですが、さすがにプロ、博識で引き出しをたくさん持っています。四国で初めての「シロクマ観察ツアー」のときなど、内容にぴったりのイラストでびっくりしたことでした。
高齢化社会といわれるようになって、定年後の生き方や趣味についての話題が盛んです。「つれづれノート」を読んでくださった中高年の方も多いと思います。
旅行はそれ自体一つの趣味であり、さまざまな要素を織り込んで楽しむことを考えれば、万人向きと言えるでしょう。異国の景色や風俗に触れて自分自身を再発見し、「青い鳥」の話のように旅を通じて日常生活の価値に気付くこともあります。
“旅で最も必要なのはお金”と言われます。しかし、それ以上に大切なのが健康です。“高新観光”でなくて結構です。健康に気を付けて、いつまでも皆さんに国内・海外の旅を楽しんでいただきたいと思います。
そして旅先で、土佐弁丸出しの、イラストで見たような顔の添乗員を見掛けたら、ぜひ声を掛けてください。
(おわり) |
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(株)高知新聞企業(高知新聞観光)
観光庁長官登録第444号
社団法人日本旅行業協会正会員
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