添乗員つれづれのーと
1〜5 / 6〜10 / 11〜15 / 16〜20 / 21〜25 / 26〜30 / 31〜35 / 36〜40
41〜45 / 46〜50 / 51〜55 / 56〜60 / 61〜65 / 66〜70 / 71〜75 / 76 / 77
78 / 79 / 80 / 81〜85 / 86〜90 / 91〜96

   
  76.ベートーベンの家 2004年10月28日高知新聞掲載  
ウィーンの郊外風景 イメージ  ウィーンの郊外には“ウィーンの森”が広がっています。
 森というからにはうっそうとした森林地帯を想像するのが普通ですが、この森はブドウ畑や雑木林、遊歩道などが広がり、ウィーン市民の憩いの場とも言えそうな雰囲気の丘陵地帯です。森という定義からすれば、“ウィーンの森”より高知市の北山の方がまだそれらしい感じがします。
 歴史の豊かな“ウィーンの森”には、この土地を愛した音楽家を中心とする多くの芸術家の足跡が残っています。特に有名なものの一つは、生涯を通じて引っ越し魔だったベートーベンが比較的長く住んで名曲を作曲した家です。
 以前、日本人の男性ガイドの案内で“ベートーベンハウス”と呼ばれるこの家を訪れました。ベートーベンが作曲に使っていた部屋で、「このピアノで有名な月光の曲を作曲しました」と説明してもらったのですが、聞いていた私たちの反応が少し鈍かったようです。ガイドは怒ったようにいきなりピアノの前に座ると、“月光の曲”をしばらく弾き、「こんな曲です。思い出しましたか? 次行きましょう」と言って立ち上がりました。
 歴史的に貴重なピアノを勝手に使い、いかつい男性ガイドがまるでピアニストのようにベートーベンを弾いて見せたことに、全員が度肝を抜かれました。
 後で聞くと彼は声楽の勉強中で、ガイドの仕事はアルバイトとのこと。数年後、日本からウィーンへ旅行に来た私学の経営者にすっかり気に入られ、見事“逆玉の輿(こし)”に乗ったそうです。
 小澤征爾の活躍するウィーンには音楽を勉強している日本人が多く住んでいます。
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  77.“ホイリゲ” 2004年11月4日高知新聞掲載  
ウィーンのワイン畑 イメージ  ウィーンの楽しみの一つは“ホイリゲ”です。直訳すると「ワインの新酒」のようですが、今は「本年度産ワインを飲ませる店」の意味で使われています。
 もともとはワイン造り農家が、自家製の新酒ができたことを松の葉で作った飾りを吊(つ)るして知らせ、庭先で飲ませたことが起源です。現在は農家のアルバイトの域を超えてなかなかのプロになっています。
 ホイリゲの村はウィーンの郊外に幾つかあり、中でも有名なグリンツィングは数十軒のホイリゲが軒を連ね、毎晩観光客でにぎわいます。観光客はホテルからバスで出かけることになります。同じホイリゲでも、生演奏のある店や数百人をさばける店、ブドウ棚の下のテーブルで飲む店などがあります。
 飲むのは辛口の白ワインがほとんど。出来たてのワインはさっぱりした味でおいしく、特に夏から秋にかけてのお薦めは、発酵途中でまだワインになりきっていない“シュトゥルム”です。濁ったアップルジュースのような色をしているのですが、味はブドウジュースでもワインでもなく、あまりアルコールが得意でない人にも好評です。日本ではまず飲めないことも魅力です。ただし、酒は酒ですので飲みすぎには要注意です。
 ホイリゲの雰囲気はビアホールのワイン版といったところで実に庶民的。飲むほどに酔うほどに各国の観光客が入り交じって交流会のようにもなります。
 どこかで同じような飲み方を・・・・・・と、酔った頭で思い出したのは高知の結婚披露宴でした。こうしてウィーン郊外の夜は楽しく更けていきます。
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  78.ザルツブルク 2004年11月11日高知新聞掲載  
ザルツブルグ イメージ  ウィーンから西に約300キロ、快適なアウトバーンをバスで約4時間走るとザルツブルクです。広々と続く平野を走り抜け、遠くに山の姿が見えてくると到着。山はヨーロッパアルプスの東端の一部です。
 規模はそんなに大きくないのですが、観光客にとって外すことのできない街です。モーツァルトの生家があり、夏には“ザルツブルク音楽祭”が開かれるといえば、音楽好きは頷(うなず)いてくれるでしょう。
 川を挟んで旧市街と新市街に分かれ、旧市街は車の通行が禁止されているので徒歩で観光します。花が飾られた古い建物が並び、歩くのにちょうどの、ヨーロッパらしい魅力にあふれた街です。
 映画やミュージカルで世界的にヒットした「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台としても知られています。映画は実際にこの街で撮影されたので、市内観光バスに“サウンド・オブ・ミュージック”コースがあり、アメリカ人に特に人気です。私たちも映画の「ドレミの歌」の場面が撮られたミラベル公園には必ず立ち寄ります。
 時間があれば湖水地帯に足を延ばし、映画に出てきた“マリアが結婚した教会”やボート遊びをした場所を見ることもできます。
 ただし、映画で描かれたとおりではありません。以前高知ロケをした刑事ドラマで、桂浜から逃走した犯人が次の場面で四国カルストを走っていましたが、あれと同じです。
 ある現地ガイドの十八番−「前方の山が、映画のラストでマリアと子供たちがドイツ軍から逃れ、自由のスイスに向かって山越えした山です。でも実際にあの山を越えるとドイツ領なんですよ」。
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  79.美しいチロル 2004年11月18日高知新聞掲載  
チロル地方 イメージ  オーストリアの形は大まかに見れば東を頭にしたオタマジャクシ。頭の方にウィーンがあり、細長い尾の部分がチロル地方になります。
 ザルツブルクからアウトバーン(高速道)を西に走ると一気にチロル地方に入り、やがて冬のオリンピックで有名な中心都市インスブルックです。
 チロルという言葉の響きには爽(さわ)やかな印象があります。しかし、冬は世界有数のスキー天国ですが、夏場の旅行日程を作るのは難しい。チロル情緒を最高に感じてもらえる場所はどこか、「これがチロルだ」と団体バスが大挙して押しかけるような所もないし、“チロルの碑”みたいなものもありません。
 高知の四万十川観光にも似たような要素があります。「四万十川はどこに行けば良いでしょう?」という県外からの問い合わせに一言では答えられない。
 日程を聞いた上で、とりあえず中村に行って遊覧船か舟母(せんば)に乗ることを勧め、沈下橋に行くことをアドバイスし、さらに少し上流を車で走ってみるのも・・・などと返事することになります。
 チロル地方の大部分はヨーロッパアルプスの3,000メートル級の山々が続き、山あいのそれぞれの谷に民家の形や民族衣装、言語が少しずつ違う独特の文化が発達しました。一般道をバスで走ると、美しい緑の中、ベランダに花をいっぱいに飾ったチロル風の民家が点在します。次々と絵はがきのような景色が展開して飽きることがありません。
 結局、チロル観光はコストのかからない自然志向型。高速道を離れて山あいの一般道をバスで走り、写真を撮ったり、高山植物の中のハイキングを楽しんだりするコースがお勧めです。
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  80.ルームキー 2004年11月25日高知新聞掲載  
カードキーは持っているのに・・・・・・ イメージ  最近はカード形式のものが主流になりました。かさばらず、連泊する場合などフロントにいちいち預ける必要もなく、以前の鍵とは使い勝手が大違いです。しかし、良いことばかりではありません。
 一般的に日本国内のものは性能が良く、部屋に入れないようなケースはほとんど起こりません。問題が生じるのは海外です。
 同じカード形式でもホテルによって多少の違いがあり、ゆっくり差し込んで開くものもありますが、スーパーのレジ係がバーコードを通すような適度の早さで出し入れするのが理想的です。操作が早すぎたり、差し込んだままだったりすると反応しない場合があります。カードの裏表の確認も必要です。また、ホテルのプログラムミスで反応しないことも結構あります。
 ツアー中、チェックインを済ませて、お客様にそれぞれの部屋に入ってもらったあとロビーで待機していると、「キーがおかしい」と言って、何人もが戻ってこられるのも珍しくありません。
 また、どこかで落としたときに悪用されるのを防ぐため、カードキーには部屋番号を記していないのが一般的です。これが裏目に出て、うっかりするとカードキーは持っているのに、部屋番号を忘れて部屋に入れないというケースが発生します。
 旅行土産の失敗談としてはよいネタになりますが、時と場合によって笑うに笑えない事態に発展します。部屋番号を確実に記憶するなり、メモ書きして身につけておくなりして、注意することが必要です。
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