添乗員つれづれのーと
1〜5 / 6〜10 / 11〜15 / 16〜20 / 21〜25 / 26〜30 / 31〜35 / 36〜40
41〜45 / 46〜50 / 51〜55 / 56〜60 / 61〜65 / 66 / 67 / 68 / 69 / 70
71〜75 / 76〜80 / 81〜85 / 86〜90 / 91〜96

   
  66.日本人がいない 2004年7月29日高知新聞掲載  
日本人がいない街 イメージ  地中海に浮かぶ島、マルタ島では日本人観光客に全く出会いませんでした。マルタ島は淡路島の半分の大きさながら3つの世界遺産があり、毎年多くの観光客が訪れます。このような観光地で4泊もしながら日本人を見かけないというのは結構珍しいことです。
 誰もが気軽に海外へ出かけるようになり、テレビの影響でヒッチハイクの貧乏旅行まで定着したこのごろでは、世界中日本人に会わない場所はないほどです。アフリカでも南米でもどこでも、旅行者、あるいは現地に住み着いてしまった人など、元気な同胞に出会います。季節もので人気のある7月のスイスアルプスなど、登山電車は日本の通勤電車のようで、山上の駅は「ここは上高地か、霧ケ峰か」といった賑(にぎ)わいだったようです。
 思い返すと、旅行先のレストランで東洋系のグループと一緒になり、内輪で「国籍は分からんけど、格好から見て少なくとも日本人じゃないねえ」と話していて、その後言葉を交わすとやはり日本人。「私たちも同じことを話してましたよ」と、笑い話のような経験も何度かしました。
 マルタ島に日本人観光客がいないのは、ヨーロッパから陸続きでなく、ついでに訪れることができないからにほかなりません。その上ショッピングの楽しめる都会から遠く、「日本人ご用達観光ルート」から外れていることも理由でしょう。
 実は今週、添乗員として「イタリアツアー」に行くことになっています。人気のあるコースで、しかも夏休み。これから8日間、高知で普通に暮らしていて出会う以上の数の日本人に出会うことは間違いありません。
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  67.マルタの英語 2004年8月5日高知新聞掲載  
“下手な英語”は通用しません。 イメージ  マルタはイタリア領シチリアの南、アフリカ寄りにある島ですが、複雑な歴史の結果、公用語は英語です。
 マルタ語というアラビア語に似た現地語がありますが、島内で普通に話されるのは英語です。周辺の国はイタリア、ギリシャ、チュニジアなどで英語圏はありません。
 現地に行ってわかったのですが、マルタの英語は極端に受け皿が広く融通無碍(むげ)、要するに難しいことをあまり言わない英語でした。
 アジアの国の中にも、現地語とは別に公用語や共通語として英語を話す国があります。シンガポール、フィリピンなどです。
 こういった国々では、文法や細かなアクセントなど気にしなくてもかなり通じます。耳に入ってくる言葉だけでなく、周りの状況や相手の表情など観察力と洞察力を縦横に働かせて理解しあう伝達手段としての英語です。
 これとは逆に本来の英語圏でも、外国人の少ないアメリカの田舎町やイギリスの地方都市などでは、相手が慣れていないので“下手な英語”は通用しません。
 マルタでは島に3人しかいないという日本人ガイドの1人に案内してもらいました。彼女はマルタ島に来て8年、英語をABCからマルタで覚えたのが自慢です。関西出身でマルタの太陽のように明るい性格の彼女いわく、
 「私の英語はマルタでは全く困ることはなく、マルタ人の主人とも英語で話しているけれど、イギリスやアメリカからの観光客には通用しないのよ」
 海外英語研修パンフレットの留学先としてマルタもあります。しかし、このような理由であまり推薦できません。英語の自信をつけるのが目的なら最高の場所です。
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  68.荷物がない 2004年8月12日高知新聞掲載  
旅行の荷物 イメージ  先だってのイタリア旅行で航空機預けの荷物の紛失が起こりました。到着地の空港の荷物受け取りのターンテーブルに、出発の際に預けた荷物が出てこないというケースです。
 海外旅行におけるトラブルの一つとして常に意識にあるのですが、近年はどこの航空会社もコンピューターによる管理をしているので発生件数が少なくなり、私自身3年ぶりの経験でした。
 一昔前はよく紛失していました。特に海外の大きい空港で乗り換えをした時が危険信号で、目的地のターンテーブルに全員のスーツケースが出てきた時は思わずガッツポーズでした。
 荷物が出てこない場合、クレームタッグと呼ばれる、預けたときに渡される半券を提示して手続きをします。紛失といっても盗難に遭ったわけではなく、ほとんどが荷物の積み間違いで、乗り換えの空港に残されてしまったり、別の路線の航空機に乗せられてしまったりしたものです。
 残されてしまった場合は早い段階で受け取れます。厄介なのは全然違う路線の航空機に乗せられてしまったときです。ヨーロッパの大きい空港など世界中に航空網が延びていますので、「私のスーツケースは今世界のどこを旅しているの?」といった状態になります。
 荷物が見つかるまで、旅行者は文字通り“着たきりすずめ”になってしまい、添乗員として心が痛みます。夕食の時に「明日には届くらしいから」と笑顔で振る舞っていた女性がそのうち言葉少なになり、ふと見ると涙ぐんでいたりします。
 荷物が届かないまま宿泊することになった場合、必要な身のまわり品を購入して領収書をもらっておけば、後日航空会社や海外旅行保険から常識の範囲内で払い戻しがあります。手続きをした紛失荷物は通常2、3日で発見され、旅先のホテルに送られてきます。
 今回のイタリア旅行では、空港に着いていたのに係員がミスしたという日本では考えられないような事情だったので、翌日受け取れました。
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  69.高知はどこ? 2004年9月2日高知新聞掲載  
高知はどこ? イメージ  台風16号の来襲前日に悪運強く帰高できました。仕事ではなしに宮城県へ行ってきたのですが、添乗の仕事で行くのとは感じが全く違います。
 瑞巌寺の案内人のオバチャンの説明が、よく聞くとくだらないジョーク連発で結構笑えたのが新しい発見でした。東北は食膳(ぜん)に上がるものや酒の肴(さかな)が高知と同じで魚偏が売りですが、種類が違います。現在最盛期のさんまの刺し身が特に美味でした。
 私たちが東北の県名全部をなかなか正確に言えないように、東北の人たちは四国を仙台から直航便の出ている上海と同じぐらい遠く感じているようです。石巻で「高知の場所が分からない」という若いウエートレスに取りあえず日本の地図を大まかに書くように言ったところ、北海道と本州はほぼ正確でしたが、その下に小さな丸を2つ並べて書いたのが四国と九州でした。
 以前、ヨーロッパで親しくなったドライバーにアジアの大体の地図と日本の位置を書かせた時は、中国らしい大陸の隅の方、青島か上海のあたりが日本でした。当人が生きていく上で知らなくても困らない地域という部分が共通点です。
 旅行先で高知、あるいは日本をよく知っているという人に出会うと何となく楽しい気持ちになります。今回も仙台の牛タンの店に高知大学卒業の店長がいて大いに盛り上がりました。反対に全く知らないという人との出会いもそれはそれで新鮮です。
 地球や日本が狭くなってしまったことを実感することの多い昨今、逆に考えるとこちらの知らない旅行先もまだまだたくさん残っているということの証明のようにも思えます。
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  70.悩ましい台風 2004年9月9日高知新聞掲載  
台風 イメージイラスト  今年は台風のよく上陸する年です。先日はその影響で久しぶりに長時間の停電を経験しました。
 停電は開発途上の国へ行くと時々経験することで、そういう国ではホテルの部屋に懐中電灯やロウソクが常備されていたりします。
 台風の影響を受ける業種は数多くありますが、旅行業界はその最たるものの一つです。陸や海の交通網の乱れも大きいのですが、空の便の欠航は致命的です。今年は沖縄方面に旅行の計画をした同業者の苦労話を幾つも聞きました。
 私も7月にチャーター機でイタリアへ行ったのですが、その帰国便が迷走台風11号の影響を受けました。ローマから高知へ直航という画期的な飛行予定が、高知へ着陸できず、関西空港着になったのです。そして、高知までバスで約6時間。明石大橋が通行止めにならないか、高知自動車道は大丈夫かとやきもきした末、土砂降りの高知に帰り着いたのは深夜でした。
 ところで、東京や大阪へ個人で航空便を利用するとき、ホテルと航空券がセットになったものや「早割り」と呼ばれる早期購入割引など、ディスカウント・チケットの利用が多くなっています。
 こういった航空券には「早めに予約しなければならない」「変更ができない」など幾つかの約束事があります。台風の時など厄介なのがこの部分です。
 例えば、東京行きの航空券を持っている時、翌日に高い確率で台風が来そうでも、欠航が決まっていないと1日早い便への変更ができません。仕方なく航空券を別に購入して東京へ行った場合、本来予定していた翌日の便が欠航になれば払い戻しが受けられますが、予定通り飛んでしまったら「当日キャンセル」の扱いになり、かなりの取り消し料が必要になります。
 おいしい話の裏には何かあるということでしょうか。
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